猫が死んだ

5月3日から今日まで、実家に帰省していた。
6連休と言う長い休みを、程ほどに満喫してきた。
しかし今日、突然うちで飼っていた猫を看取ることになった。


一昨日の午前中までは普通に元気で、
やりすぎだというくらいトイレの砂を掻き出してじゃれていた。
一昨日の夕方から、他の猫が近づくとものすごい勢いで怒るようになり、
逆に私たちが近づくと甘えた声を出すようになった。
気が立っているので、「具合悪いのかも」と思ったけど、
食べすぎだろう、くらいにしか思わなかった。
昨日は朝から妹と母は仕事に出かけていて、
私は夕方までその猫を見ることがなかった。
午後5時過ぎ、「具合どうだー」と覗くと、血を吐いていた。
目はうつろで、でも撫でるとゴロゴロ言って反応した。
そこでびっくり仰天し、仕事から帰ってきた妹の車で病院へ行った。
猫が血を吐くと言うのはとても珍しいらしい。
口をあけるのを断固として拒んだために中を確認することができず
その場では原因が良くわからないから、
抗生物質と止血剤などを点滴し、念のため胃潰瘍の薬を飲ませてもらった。
しかし帰ってからも血は止まらず、たまに塊を吐いた。
ここで、吐いていると言うよりはほとんど流れ続けていると気づいた。


今朝、他の猫を呼ぶ声で目が覚めた。
血は止まっていて、寝ていた箱の中から出たところで寝ていた。
箱の中に戻し、撫でてやると眠った。
また少し経つと鳴き出し、箱から出ようとするので撫でにいって落ち着かせた。
今日の午前中に病院にということだったので、
10時過ぎに母と病院に連れて行った。
その時には、もうおとなしく眠っていた。
病院について、また様子を話して点滴をうってもらった。
とりあえず吐血は止まっているし、
おそらく血を吐くのは食道か肺が傷ついているのではなかろうかと言うことで、
結局点滴をして回復を待つしかない、とのことだった。
母の仕事の時間なので、そのまま自営業をしている店に向かった。
箱をもって動くのが嫌らしく、車に乗せると鳴く。
でも結局、これが最後に聞いた声になった。


この15分ほど後、店につく直前にふと見ると、
体が全く動いていないのに気が付いた。
昨日から、眠っている時に「ちゃんと生きてるよな」と確認するために、
呼吸で動く体を確認していたのだ。
さっき病院で診てもらったばかりだし、
その時は、前の日の点滴をちゃんと吸収しているから死なないよと言われたし、
そんなバカなと思った。
でも、もう撫でても何の反応もなく、
店に到着してから顔を持ち上げてみても何も反応もなかった。
その後、病院に逆戻りし、瞳孔が開いていることが確認された。
力のなくなった口を開け、中を確認すると、舌を噛んで傷ついていたのがわかった。
吐血はこれだったのだ。
あの時ちゃんと口あけてれば、そこの出血だけでも止めてもらえたのに
まったくアホなやつだ。
医師の話だと、この出血だけで死ぬわけはないから、
おそらく原因は別にあったのだろうということだった。
そして予想より体が弱っていて、点滴が悪い方向に刺激を与えてしまったのだろうと。


「僕が一番さ!」みたいな性格の猫で、
どうしようもないけどまたそこが可愛かった。
あまりに突然のことで、まさかこんな想いで帰ってくるとは思わなかった。
この子は明日、母と妹の手で、
今まで一緒に暮らしたほかの猫が眠る場所に埋められるだろう。


あっけないものだね、と母が言った。
本当だ。
病院から出るときは、血も止まったし、暫くは大丈夫と思って晴れやかな気持ちでいたのに。
思えば、うちの猫の亡くなる瞬間に立ち会ったのは初めてかもしれない。
今までは、死期にはいなくなっていたり、
交通事故で既に亡くなっていたり。
まだ生きてるんじゃないかと思うような、柔らかい体を見たのは初めてだった。
眠ったまま逝ってしまったから、苦しまないでいけたことと、
隣にいられたことが唯一の救いかもしれない。
でも、今でも今朝や、車の中で撫でてあげた感触が残っている。
そして、店から病院に行く間に、もう動かなくなった体を撫でていた感触も。


電車の中で泣いているとおかしな人なので、
あまり思い出さないようにしながら帰ってきた。
気分を紛らわすために、本買ったりして、読んでたら涙も出なくなった。
ということでこれを書き始めたんだけど、やっぱりダメだね。
でもあまり思っていると成仏できないそうなので、
奴は自己中だから自分の楽しい方に言っているだろうと予想して、
これをもって思い切ることにしたいと思います。


がっちゃん、助けてやれなくてごめん。
成仏しろよ。